サッカー選手を夢見た少年

 とある世界のおはなし。

 サッカーが好きな少年がいた。将来の夢は『プロサッカーチームですごい活躍をして、お金持ちになること』だった。

 中学、高校でも一生懸命にサッカーを続けたが、プロサッカー選手になることはかなわなかった。


 高校を卒業して、健康食品を販売する会社で営業マンとして働くことになった。

 体力と根性には自信があったので、たくさんのお客さんをまわり、色々な意見を聞き、少しでも商品を売ろうと頑張った。

 そのうち食品の知識も身につき、自分がサッカーをやっていた頃になにを食べるべきだったか考え、商品開発の人たちとも相談するようになった。

 そんな忙しい毎日を送ったが、週に一回、かならず仲間たちとサッカーを楽しんだ。


 青年から中年になるころ、もっとスポーツ選手のための商品をつくりたいと考え、仲間を集めてスポーツ選手専門のサプリ会社をつくった。

 はじめは上手くいかなかったが、体力と根性には自信があったので、たくさんのチームをまわり、いろいろな意見を聞き、少しでも良い商品をつくろうと頑張った。

 おかげで徐々に売れるようになったが、もっと多くの選手が活躍できる商品を作りたいと、儲けた分は商品開発に注ぎ込んだ。

 そんな忙しい毎日を送ったが、週に一回、かならず仲間たちとサッカーを楽しんだ。


 いつしか中年から老年になり、その頃には会社も大きくなっていた。

 あちこちのチームや選手から注文をもらい、そのたびに丁寧に商品をつくった。

 社長としてお金持ちになったので、財産を投じてプロサッカーチームのオーナーになった。

 チームが強くなるための支援は惜しまず、同時に最新のサプリも提供したので、チームが強くなるほど会社の売り上げもあがった。

 そんな忙しい毎日を送ったが、週に一回、かならず仲間たちとサッカーを楽しんだ。


 それからさらに年をとったので会社は若い人に譲り、サッカーチームだけをみるようになった。

 自由な時間も増えたので、プロの選手たちに混ざって練習もした。

 当然、プロの選手と同じようには動けないが、それでもオーナーが練習に参加すると話題になった。

 おかげでシニアの大会に出場すると人気者で、年齢を感じさせないプレーを連発して周囲を驚かせた。


 気がつくと『プロサッカーチームですごい活躍をして、お金持ちになること』を夢見た少年は、プロサッカーチームのオーナーで、シニアリーグの得点王で、会社が成功してお金持ちになっていた。


コメント

このブログの人気の投稿

ひとりでに鳴る太鼓

だれが速い

暗い山道

賛成する人を探す人