わんにゃん瓢箪記
とある世界のおはなし。
男は村のはずれで、イヌとネコとニワトリを飼って暮らしていた。
三匹は喧嘩もせず仲良くすごしていたが、ある日ニワトリがイヌとネコに告げた。
「旦那様のおかげで幸せに過ごしてこれたが、わしも年をとり長くない。恩返しと思い裏山の秘密を教える。お前たちで旦那様に伝えてほしい」
その秘密とは、裏山には瓢箪がなるが、千年にいちど赤い瓢箪がなる。今年がちょうど千年目だ。その赤い瓢箪は一日に一度、金粒を吐き出すようになると。
しばらくしてニワトリは息を引き取った。
ニワトリの喪があけると、ネコは山にはいり赤い瓢箪を探しだした。それは小さな瓢箪だった。イヌが男を引っぱりそこに案内する。男は赤い瓢箪は珍しいと持って帰った。
だが瓢箪は小さくて酒入れにもならない。
しかたなく飾っておくと、翌朝コトリと音がした。男が不思議に思い瓢箪を逆さにすると金粒が出てきた。翌日は二粒、その翌日は三粒と、瓢箪はどんどん金粒を増やしていった。
おかげで男は金持ちになりイヌとネコも喜んだ。
村人たちは男がどこか金のとれる場所を見つけたらしいと噂し、運のいい奴だと羨んだ。
ある日、美しい女が家を訪れた。
旅の途中で仲間とはぐれ、行き場もなく困っていると。男は好きなだけいればいいと女と暮らすようになった。
女はかいがいしく働くので男は気に入ったが、イヌとネコをイジメるので2匹は嫌いだった。
しばらくすると男は、女を信じて瓢箪の秘密をばらしてしまった。すると翌朝、女は瓢箪とともに消えた。
おかげで男は貧しい生活に戻った。
イヌとネコは女を許せないと、仕返しして瓢箪を取り戻すため家を出た。
まず犬が女の匂を追った。すると大きな街に着いた。そこで女は大きな屋敷で贅沢な暮らしをしていた。
だがイヌとネコは中に入れない。どうやって瓢箪を取り返そうか悩んでいると、屋敷からネズミがでてきた。
ネコがすかさず捕まえると、ネズミは何でもすると命乞いをした。
そこでネズミに、家の中にある赤い小さな瓢箪を持ってくるよう命じると、おやすい御用と瓢箪を取り戻してきた。
イヌとネコは大喜びで瓢箪をくわえ走った。しかし女もすぐ気づき、あとを追いかけてくる。
人の足では追いつけまいと思っていたが、街を出ると女は鬼女へと変わり追ってくる。
ネコは長い距離を走るのが苦手だ。疲れてしまい『オレをおいて逃げろ』と言った。しかしイヌは『そんなことができるか』とネコに瓢箪をくわえさせ、ネコを背負い走り続けた。
だが鬼女はどんどん迫ってくる。
目の前に森があらわれた。イヌは森を走るのが苦手だ。するとネコが『おかげで休めた。今度はオレが先に行く』と森を進んだ。
ネコはイヌの足にあわせ進みやすい道を選んだが、鬼女は草木をなぎ倒して追いかけてくる。
イヌは『オレをおいて逃げろ』と言ったが、ネコは『そんなことができるか』と離れようとしない。
だが鬼女はどんどん迫ってくる。
悩んだ2匹は山に逃げた。切り立った険しい山だ。
渓谷の底からはゴウゴウと川の音が聞こえる。高いところが苦手なイヌはすくみ、水が苦手なネコは縮こまった。しかし勇気をだして進んだ。
それでも鬼女は追ってくる。
ついに2匹は逃げることを諦め、物陰に隠れて待ち伏せした。鬼女を谷底に落そうと考えたのだ。
鬼女がやってくると、ネコが飛び出し顔を引っかいた。ひるんだところでイヌが足に噛みついた。
鬼女はそのまま谷底に落ちたが、伸ばした手がネコの長い尻尾をつかんだ。
ネコは必死で踏ん張った。しかし一緒に落ちてしまった。
高いところが苦手なイヌは渓谷をのぞきこみ身震いした。それでもネコを救おうと瓢箪をくわえ飛びこんだ。
泳ぎが得意なイヌでも流されるほどの急流だった。必死でネコを探した。
すると川の途中で必死に岩にしがみつくネコを見つけた。
なんとか近づいたが、イヌには手がない。くわえていた瓢箪を放すと、ネコをくわえて流されていった。
川下でやっと流れが緩やかになり、なんとか河岸に上がった2匹。さすがにヘトヘトだった。
それでも、疲れた体を奮い立たせ瓢箪はないか探した。日が暮れ、朝まで探し続けたが瓢箪は見つからなかった。
2匹は途方にくれてしまった。
2匹は男の元に帰ることにした。
瓢箪は持ち帰れなかったが、あの女への仕返しはできたと互いを褒めたたえた。
2匹が戻ると男は『どこに行っていた』と涙を流して喜んだ。そしてわずかに残っていた金で、お祝いに大きな鯛を買ってきた。
鯛をさばくと、なんとお腹の中から赤い瓢箪が出てきた。
男とイヌとネコは、それからも幸せに暮らしたとさ。
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