お姫様を夢見た少女
とある世界のおはなし。
港町に少女がいた。『いつか素敵な王子様がむかえにきてお姫様になる』と夢みながら貿易商で働いていた。
ある日、友だちの結婚式にとびきり綺麗な服で出席した。そこで普段は飲まない酒を飲んだ。
おかげで酔っぱらい、帰る途中で眠くなって道端の樽に入り寝てしまった。
翌日、目が覚めると樽は船に載せられ、少女は海の上にいた。
積み荷から少女がでてきたと船中が大騒ぎとなった。
たくましい船乗りたちに囲まれ少女は泣きそうになったが、勇気をふりしぼり強い口調で言った。
「わたしに乱暴することは許しません!」
綺麗な服で毅然とした態度をとる少女に、船乗りたちは『どこか裕福な家の娘かもしれない』と思った。
なぜ船にいるかは分からないが、とにかく粗末にはあつかえない。船でいちばんいい部屋を与え、積み荷からいちばん高級な服を着せ、まるでお姫様のように大事にした。
少女も大事にされると嬉しくなり、なんとか恩返しがしたいと思った。
そんなとき、海賊が船を襲ってきた。
武器を手にした海賊たちが船に乗り込んできて大騒ぎになった。
荒くれな男たちに囲まれ少女は泣きそうになったが、勇気をふりしぼり強い口調で言った。
「この船を襲うことは許しません!」
高級な服を着て毅然とした態度をとる少女に、海賊たちは『どこかの領主の娘かもしれない』と思った。
なぜ船にいるかは分からないが、とにかく粗末にはあつかえない。あじとに連れ帰り貯め込んだドレスや宝石で着飾らせ、まるでお姫様のように大事にした。
少女も大事にされると嬉しくなり、なんとか恩返しがしたいと思った。
そんなとき、軍隊が海賊を退治するため攻めてきた。
たくさんの兵隊が攻撃してきて海賊たちは大騒ぎになった。
屈強な兵たちに囲まれ少女は泣きそうになったが、勇気をふりしぼり強い口調で言った。
「この者たちに危害をくわえることは許しません!」
ドレスと宝石を身に着け毅然とした態度をとる少女に、兵たちは『どこかの国のお姫様かもしれない』と思った。
さっそく司令官に報告すると、海賊と間違えて他国の船乗りを攻め、おまけにお姫様に危害をくわえたら戦争になると慌てた。
そこで海賊たちに『本当は海賊ではない』と約束させて帰っていった。
おかげで命は助かったが、約束したので今後は海賊はできない。これからどうすればいいか分からなくなった。
そこで少女は、貿易商で働いていた経験を活かして海賊たちに貿易のしかたを教えた。
読み書き計算も得意だったので、取り引きの役にたつからと教えた。
すると命知らずの海賊たち、働き方さえわかれば怖いものなしで海に乗り出した。
そしてどんどん新しい貿易地を見つけ、どんどん荷物を運んで、どんどん儲かるようになっていった。
新しい貿易地が見つかるたびに少女も乗り込み、その土地を調べて『ここでとれる物はあの国の人たちが喜びそうだ』『その国の物をこの人たちは欲しがるだろう』と元海賊たちに教え、とても忙しい日々を送った。
気が付くと海賊たちは世界中をつなぐ貿易商となっていた。『いつか素敵な王子様がむかえにきてお姫様になる』と夢見た少女は、いつしか『海の女王』と呼ばれるようになっていた。
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